PLCに無線LANでアクセスする方法

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無線は便利。ってか有線めんどい。

最近のCPUはEthernetを内蔵しているものが多く、スマホが普及してきた現在となっては一般家庭で無線LANを使うことも多いと思います。となればEthernetがあるPLCなら無線LANで接続することを考えるのは至極当然の流れでしょう。
(装置を扱う現場での無線化はイマイチ少ないかもしれません。もちろん無線LANを設置する装置もありますが、、組織・責任者・担当者の考え次第?)

個人的には5~6年くらい前から装置立ち上げの現場で使っており、その経験&感覚からすると、、、
もはや無線LANがない装置は面倒くさい
というレベルに達してます(笑)

無線化の良いところはいろいろありますが、、
一番便利と感じるのは装置の立ち上げ初期です。シリンダであれモータであれ、準備ができて最初に動かすときはやはり実物を見ながら操作したいので、ケーブルの縛りが無いのはすごく楽です。I/Oチェックも同様で、センサを目の前にしてノートパソコンでモニタしながら調整することも容易になります。

いったん無線LANの便利さに慣れてしまうと無線化されていない装置の現場は拒否反応が出まくりです。(まあ、仕事なので拒否権はありませんけど。。)
持ち込みに制約がある現場では無理ですが、特に制約がなければ無線ルータを持ち込んで作業するパターンが多いです。今となっては現場用のセットにMy無線ルータ常備してるんで。

無線化に必要なもの

ぶっちゃけ、無線ルータがあればOKです。
とはいえ、、PLC側にEthernetの接続口が無ければ無理です。(※)
最近のCPUには内蔵Ethernetがあるのでコレを利用するのが手っ取り早いのですが多少古い機種であってもEthernetユニットを使っている構成ならば可能です。

(※)Ethernetが無くてもCPUのUSB接続を無線化する手段もあるのですが試したことがないのでココでは割愛。気になる方は”PLC USB デバイスサーバー”あたりでグーグル先生に聞いてみると幸せになれるかも知れません。

機種選択について

無線ルータの機種選択については少し注意が必要になります。
基本的に市販の\2000~\3000台のものでも実用的には十分なのですが、目的と使い勝手を考慮して選択すべきです。
ちなみにPLCと接続するには無線のアクセスポイント機能・ブリッジ機能があれば良いのですが民生機器レベルではルータ機能も付いている機種がほとんどで、アクセスポイント機能のみで機種を検索すると商品がヒットしないこともあるので注意してください。

・装置に恒久的に設置する場合
安定性重視となるため家電量販店で市販されているような機種は避けるべきです。PLCのメーカから販売されているものや高信頼性をうたうウン万円はする機種を選択しましょう。ちなみにこの記事ではアウトオブ眼中です。


・装置の初期立ち上げや1~2週間程度のデバッグを主目的とする場合
(こっちがこの記事で扱いたいヤツ)

無線で接続したいPCが1~2台であればだいたいなんでもOKです。実売価格が\2000前後で小型(単三電池×2本ぶんくらい?)のものでも使おうと思えば使えるのですが、DHCPの設定が出来ずPC側のIPを自分で指定しないとPLCと接続できないので使い勝手が悪く、使える範囲も狭い機種が大半です。(多分5メートルを超えるあたりからあやしい)

私のオススメとしては実売価格\3000~\4000台の機種です。このクラスの機種はたいていHUB兼用で有線ポートが4個程度あり、DHCPの設定が出来ます。使える範囲も見通し10~20メートルは余裕で届くので現場で使うには十分だと思います。(装置・設備の規模にもよりますが。)
私物として購入・試してみるにも手ごろな価格帯なのもポイントです。
直感で気に入ったもので特に問題ありませんが、、
迷ったらBUFFALO、I-O DATA、NECあたりのメジャーどころを選んでおけばそうそう失敗しません。

無線ルータの設定について

設定自体は簡単なのですがこれまでの経験上、意外に知らない人が多い感じがします。
PLCと接続する際には一般家庭で使う用途とは少し違うため当然用途に合わせた設定が必要になります。メーカーによって多少用語が異なったりすることがありますがポイントを掴めば難しいことはありません。

ちなみにココではローカルで使う前提です。本当にインターネット回線を使って接続するやり方ではないので注意して下さい。(ネット回線を使うような構成はネットワーク関係の専任者が居てしかるべきだと思うので。)

設定の準備

無線ルータの設定はブラウザ経由で行います。(無線ルータが設定用のHTTPサーバ機能を持っている)
当然のことなのですが、使う機種の説明書やネットで”機種名 マニュアル”で検索してルータへのアクセス方法を確認しなくてはなりません。確認すべき項目は次の2点です。

  1. IPアドレス
  2. ログインのユーザ名とパスワード

※機種(というよりメーカ)によって初期値にクセがあります。IPアドレスは192.168.0.1や192.168.1.1を使っているものが多いです。ユーザ名は”admin”か”root”、パスワードは”password”とか”pass”とか”admin”あたり。

ルータのIPアドレスを確認したら、設定に使うPCのIPアドレスを変更します。
ルータのIPアドレスの3つ目までを同じにし、4つ目はルータのアドレスと重複しない値にします。
例:ルータのIPが192.168.1.1の場合 → PCのIPを192.168.1.200
※サブネットマスクは255.255.255.0でOK
※言うまでも無いですが、、ルータの設定が終わったら元に戻してOKなので必要に応じて変更前の値を控えて下さい。

PCのIPを設定したらPCとルータをLANケーブルで接続します。
※ルータの接続口が複数ある場合はLAN側を使用してください(WAN/INTERNET側に接続しない)

ブラウザを起動してアドレスバーに”http://192.168.1.1″のようにルータのIPアドレスを直打ちするとログインを求められます。(機種によってhttpではなくhttpsの場合あり)
あとはユーザ名とパスワードを入力すると設定画面が表示され、設定準備完了です。

もしブラウザでアクセス出来ない場合は次のいずれかの場合がほとんどです。人間はミスをするものなのでまずは積極的に自分を疑いましょう(笑)
・ルータもしくはPCのIPアドレスが違う
・ルータの電源入れ忘れ
・ブラウザでのタイプミス
・ケーブル異常(断線とか)

上記はルータと有線接続を前提に説明しています。
機種によっては初期設定のSSIDとセキュリティキーで無線アクセスして設定変更が可能な場合があります。

設定のポイント

ここから先はブラウザ経由で設定しますが、機種毎に画面・メニュー構成が異なるためポイントを抑えて説明します。

  1. ルータの動作モード設定
    アクセスポイントモード/ブリッジモードを使う
    ※ブラウザ経由で設定するか外部の切替SWで設定
    ※機種によって自動判別&切替するものもあり
  2. ローカルのIPアドレスを設定
    ※PLC側で使っているIPアドレスの3つ目までを合わせ、4つ目はネットワーク内で重複しないものにする
  3. DHCP機能の有効化と範囲設定
    無線でアクセスしてきたPCに対してIPを割り振る機能
    PCに対して割り振るIPアドレスとPLC側のIPアドレスを同じネットワークアドレスにしないとPCから(おそらく)PLCにアクセス出来ない(試したことはない。。)
  4. SSID(またはESSID)を設定
    任意の名称でOK
    もし近くで他の無線アクセスポイントがあれば重複しない名称が吉。
  5. セキュリティの種別とキー
    セキュリティ無しでも問題はありませんが、、
    やはり誰でもアクセスできる状況は良くないので設定すべき(※)
  6. 上記を設定したら保存&再起動
    機種によっては項目を設定変更を適用する度に保存・再起動するものもある
    当然ですが保存せずに再起動だけすると設定が元に戻るので注意(過去に操作ミスで保存せずに再起動してしまってアレ??となったことあり(苦笑))

(※)特にこだわりがなければWPA2/PSK(AES)を使いましょう。
ちなみにセキュリティ強度の強い順(≒後発の規格)にAES、TKIP、WEPとなります。
せっかくセキュリティを設定するのにWEPとか脆弱なものを選択しては意味が無いので。

設定項目はいくつかのグループに分けられたメニュー構成となっていますが、ルータの機種によって名称も異なります。
基本設定、無線設定、LAN設定、セキュリティ、等の名称が使われていることが多いのでそのあたりを探すと見つかります。

IPアドレスの設定例

当然ですがルータのIPアドレス設定をてきとーにやってしまうと無線でPLCにアクセスできません。どの値が設定として妥当なのか?はPLC側で使われているIPアドレスを確認すればおのずと見えてきます。

例えば次のような場合。(サブネットマスクは255.255.255.0とする)

名称IPアドレス
PLC-1192.168.1.1
PLC-2192.168.1.2
PLC-3192.168.1.3
装置用タッチパネル192.168.1.10

上表のネットワークであればルータのIPは192.168.1.50や192.168.1.100にするのがベターです。DHCP範囲は192.168.1.51~70や192.168.1.101~120あたりが良いでしょう。

簡単に言えばPLCで使うIPアドレスから離れた値を使うと問題ないです。
PLCが後々追加される、又は類似の装置でPLC台数が多いパターンを考えれば4桁目を200番台にする等の判断もできると思います。あとは好みです。

またルータ1台で無線アクセス可能な台数は多くても10~15台程度なのでDHCP範囲は接続可能台数以上の範囲があればOKです。(機種によって説明書等に記載されているハズ。無線LANは2.4GHz帯であれ5GHz帯であれ、少しずらした周波数をCH(チャネル/チャンネル)として使い分け、規格で最大CH数が決まっているのでそれほど多くの台数をカバー出来ない。一般の民生機器なら特に。)

このようにしておけばPCがルータにアクセスしたときにDHCP機能により自動でPLCと同じネットワークのIPを割り振られることになるので問題なくPLCに接続できるようになります。
※同じネットワークかどうかはココ(少し下にスクロール)で少し触れてます。IPとサブネットマスクのAND(論理積)が同じかどうか。

PLCに無線で接続してみる

前述までの設定が終わればPCから無線LAN経由でPLCにアクセスできるようになります。
※PLCの開発環境上からPLCに接続するにはUSB等ではなく”Ethernet接続”にしておけばOK
※PLC⇔ルータ間の接続はLAN側に接続(WAN側/INTERNET側を使わない)

ちなみにOMRONやKEYENCEの場合は気にする必要はありませんが、、
三菱の場合はEthernetのオープン設定を適切にしておかないとGX Works等の開発環境から接続できないので注意が必要です。

まずはPCからルータまでの接続ができるか?
次にPLCに接続できるか?
でチェックします。接続できない場合はどこかしらの設定を間違えている可能性が高いです。ルータに接続できてもPLCに接続できないはIP設定間違いのほかにファイアウォールの可能性があるかもしれません。

無線アクセス時の注意点

無線でPLCにアクセスする場合はいくつか注意点があります。
当然ですがあまりにルータ本体から離れると電波が届かなくなるので接続が切れます。どの程度まで無線の電波が届くかは最初に把握しておきましょう。(ギリギリの場所で試運転して動かせたけど止められなかった、みたいな事故になり兼ねないので。)

またこればかりはPLCに接続してみないと分からないのですが、、
無線LAN経由でPLCにアクセスしてモニタ状態にします。最初は問題ないし無線の電波もOKなのですが、何故か一瞬だけ接続が途切れることがあります。
おそらく機種の差というか安定性能の差、と思ってます。特に一般の民生機器だと仕方が無いところと個人的には割り切ってますが。。
※I-O DATAのWN-G300R2やWN-G300R3を使ったときに上記現象発生。同系統の装置に全然別メーカのものを搭載したときは発生せず。

で、この接続が一瞬だけ途切れる現象はタイミングによって非常にヤバいです。PLCをモニタしている途中であればさほど大きな問題にはなりませんが、RUN中書込/オンラインエディット中はマジでヤバいです。めっちゃ焦ります。たいていは変更が反映されずもとのままになっているだけなのですが、、
過去最悪だったのはその後オンラインエディット出来なくなったことがありました。
(そのときはOMRON CJ2M CPU。とりあえずPLCの電源OFF→ONで復旧できた。。)

なにが言いたいか。。
無線アクセスでのラダー書換は注意しろ!
です。モノの当たり外れも関係しそうな気もしますが。
また無線でPLCにアクセスするときはUDPではなくTCPを使うことをオススメします。

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