PLCのネットワークについて

PLCで使われるネットワークには大きく2種類あります。
・I/O拡張用のネットワーク (省配線システムなどとも呼ぶ)
・PLC間ネットワーク (PLC間リンクなどとも呼ぶ)
総称してフィールドネットワークと呼ばれます。単にフィールドネットワークというと前者を指す場合が多く、リンク(Link)という単語があれば後者を指す場合が多いです。(私見です。業界によるかもしれません。)

前者はPLCを親玉(マスタ)として子分(スレーブ)がぶら下がるネットワークです。子分はI/Oユニットだったりアナログユニットだったりします。やりとり可能な情報は通信規格やユニットによって固定化されます。

後者は名称のとおりPLCとPLCをつなぐネットワークです。ネットワークの種類によってはPCとPLCをつなぐことも可能で、やりとりする情報はユーザ=設計者まかせとなります。

目次

フィールドネットワークの種類

だいぶ昔はPLCと同じメーカだけでしか使えないものも多数存在していましたが、時代とともにオープン化が広まりマイナーなものは淘汰されて良く使われるものがほぼ決まってきたのが現在でしょうか。

ざっくり種類と特徴をつかむにはKEYENCEの接続.comというサイトが便利だと思います。
ここを見れば分かるかと思いますが、、
いろいろ淘汰されたとはいえ、そこそこ種類はあります。

全部を理解しようとすると大変です。それに使わないものを覚えても結局身に付かないので使うものだけ覚えれば特に問題はありません。それ以外は名前と雰囲気だけ記憶しておけばなんとかなります。

省配線システムとも呼ばれるネットワークでよく使われるのは、、

  • CC-Link
  • DeviceNet

だと思います。
(最近EtherCATあたりも良く聞くのですが、私自身が良く理解していないので割愛。誰か教えてください(笑))

特に三菱ならCC-Linkを高確率で使います。CC-Linkは三菱が開発し、その仕様をオープン化したものなので三菱はCC-Link推しです。現在仕様をとりまとめているのはCC-Link協会ですが三菱色が濃い(?)のは当然と言えるでしょう。

OMRONはDeviceNet推し(?)です。こちらはODVAという団体が仕様をとりまとめています。国内外の大手企業が参加しており、当然ながらOMRONも参加しています。(最近だとEtherNet/IPをI/Oユニットレベルで使用したりすることも増えているようですが私がイマイチ理解していないので割愛。)

KEYENCEは後発だけあってどちらにも対応しています。


PLC間のネットワーク(PLC間リンク)によく使われるのは、

  • CC-Link IE (Control or Field)
  • EtherNet/IP
  • FL-net

あたりでしょうか。

三菱ではCC-Link IEを使うことが多く、ControlとFieldの大きく2種類あります。似て非なる物で、Controlは光ケーブルを使うのに対しFieldはLANケーブルを使います。名称からの推測どおり、CC-Link協会が仕様を取りまとめています。

OMRONではEtherNet/IPが良く使われます。こちらはODVAが仕様を取りまとめています。

KEYENCEではEtherNet/IPかCC-Link IE Field(?)でしょうか。

また異なるメーカのPLC間ではFL-netがよく使われる傾向があります。というより異なるメーカ間ではお互いにFL-netしか使えない場合が多いためです。(日本電機工業会によって開発されたオープンなネットワークなので国内の大手メーカならFL-netに対応しているものが多い)

ただし10年~20年以上前の古いタイプのPLC間リンクでは上記に挙げたものではなく、メーカ専用のリンクユニットを使用している場合が多いかもしれません。

フィールドネットワークの特長

CC-Link

マスタユニットに対して複数のローカル局(子局とも。I/Oユニットなど。)がぶら下がる形のネットワークです。ローカル局は”局番”で管理され局番1~64まで最大64ユニットまでとなります。ローカル局にはリモートI/O局、リモートデバイス局、インテリジェントデバイス局の3種類があり、占有局数(1局 or 2局 or 4局)によって送受信のデータサイズが決まります。(Ver.2だと〇局△倍という設定が増えます。)

通信データにはRX(ビット入力)、RY(ビット出力)、RWr(ワード入力)、RWw(ワード出力)の4種類がありPLC内部の任意デバイスにリフレッシュさせて使います。(入出力はマスタから見た入力・出力なのでローカル局は逆。)最初に設定だけしておけば後は勝手にマスタユニットが通信処理をしてくれる、という使い方になります。

通信速度は156kbps、625kbps、2.5Mbps、5Mbps、10Mbpsから任意に選択し、同一ネットワーク内は当然同じ通信速度に設定しないと通信出来ません。速度を上げると伝送可能な距離は短くなり、相対的にノイズの影響が大きくなります。

ちなみにCC-Link/LTという似たものもありますが別物なので注意しましょう。

また、装置立ち上げ初期に通信できないトラブルはありがちですが三菱のCC-Link診断機能は結構優秀です。マニュアル無でもこの診断機能でだいたい解決できることが多いです。
(KEYENCEでもCC-Linkは使えますが診断機能はイマイチだったような、、?)

DeviceNet

マスタユニットに対して複数のスレーブ(I/Oユニットなど。)がぶら下がる形のネットワークです。スレーブは”ノード番号”で管理されノード番号0~63の最大64ユニットまでとなります。(ちなみにマスタユニットにもノード番号が必要なのでスレーブユニットとしては最大63)

スレーブにはCC-Linkのようなユニットの種類分けは特に無く、送信〇〇Byte&受信△△Byteという形で設定します。ビットかワードかはスレーブ側の仕様次第です。ノード番号と送受信サイズをまとめたものをスキャンリストと呼び、マスタ側にはこの情報が無いとまともに通信出来ません。(Explicitメッセージ通信は別だが。。)

通信速度は125kbps、250kbps、500kbpsから任意に選択し、同一ネットワーク内では同じでなければ通信出来ません。

こちらも装置立ち上げ初期に通信できないトラブルはありがちですが、、
三菱のCC-Linkのような診断機能の類はありません。トラブった場合はマニュアル片手にエラーコードを元に原因推定してひたすら配線をチェックするしかない、というイメージです。

CC-Link IE Control

管理局(1つだけ)と通常局(複数可)に分けられ、ネットワーク内でLB(ビット)とLW(ワード)の2種類を共有するリンクシステムで接続可能な局数は最大120です。(CPUによっては64)

管理局によってある局が書込可能な領域を設定(書込領域の重複不可)し、読出はどの局でも任意領域が可能です。ネットワークのLB/LWをCPU内の任意デバイスにリフレッシュして使う形になります。但しCPU内デバイスには限りがあるので全領域をリフレッシュできるとは限らないので使用する領域のみをリフレッシュするのが一般的です。
専用の拡張ボードを使えばPCもCC-Link IE Controlのネットワーク内に接続出来ます。

専用の光ケーブルを使うので通信速度は1Gbpsと高速です。比較的大きなデータを送受信出来るリンクのシステムですが、専用線でリング型(ループさせる形)で接続するのでコスト高・配線の制約がつきやすくなります。

ちなみに前身(?)に相当するMELSECNET/Hというネットワークもあり、リンク点数など詳細は異なるもののリンクの考え方自体はほぼ似通っています。

CC-Link IE Field

CC-Linkと似ており、マスタ局とローカル局に分けられRX(ビット入力)、RY(ビット出力)、RWr(ワード入力)、RWw(ワード出力)の形でリンクするシステムです。
CC-LinkはI/Oレベルで拡張するものですが、それをそのままPLC間(コントローラ間)にしたもの、というイメージが近いです。

基本的にマスタ・スレーブという形(1台のコントローラが命令を出力、他は命令に対する応答や状態のモニタ)でPLCの制御内容を分けられるシステムの場合は使いやすいのですが、ネットワークに接続している複数の局同士(スレーブ間)でデータを共有したい用途には向いていません。(やってやれないことは無い、、のですがすごく面倒です。)

汎用的なLANケーブルで接続できるためコスト的にメリットがあり、リング型でもスター型でも接続できるので配線上の制約も少なくなります。

ControlかFieldか。目的とするシステムとしてはControlなのに、Fieldのほうがコストや配線上のメリットがあるためソフト設計とハード(電気)設計の間で問題になることもあります。。

EtherNet/IP

タグと呼ばれる名称とデータサイズを定義したものをリンクするシステムです。(タグデータリンクと呼ばれる)
当然ながら複数のタグを定義・リンクすることが可能ですが、ユニットによってタグ数やサイズに上限があります。

リンクするコントローラ間には管理局やマスタ・スレーブといった概念はなく、オリジネータとターゲットという形になり、
・どのIPアドレスのユニットから受信するか?
・自身は何というタグを持っているか?
といった意味の設定情報をもつことになります。
三菱に慣れたユーザからすると意味が分かりにくいかもしれません。実際私も三菱→OMRON→KEYENCEと入ったクチなので文化の違いに戸惑った記憶があります。

他の特徴として通常のEthernet通信との混在が可能ですが、HUBを使う場合はQoS(Quality of Service)に対応したものを選択しないと性能が発揮できないことがあります。

PCに別途ミドルウェアを導入することによってPC-PLC間でタグリンク通信をすることも可能です。(ただPC側はめっちゃ使いにくいイメージしか無いですが。。)

FL-net

コモンメモリと呼ばれる2つの領域(通常はビットとワード)のデータを共有するネットワークです。
管理局やマスタといったものは存在しませんので、ネットワークに参加する各ノードがコモンメモリのどこを読み書きするか、という情報を持つことになります。

特徴としては

  • マスタが存在しない
    =特定のノードが離脱してもネットワーク全体が死ぬわけではない
  • 通常のEthernet通信とは混在不可
  • 対応メーカが多い

などが挙げられます。
但し対応しているメーカは多くても、実際に採用されているかどうかは別です。

たいてい複数台のPLCを使うシステムの場合はいずれか1つのメーカのPLCを採用する場合が圧倒的に多いのが現実です。三菱、OMRON、KEYENCEという国内の3大メーカのPLCを使うならCC-Link IEやEtherNet/IPを使うほうが便利なのであえてFL-netを使うことは少ないです。
工場等で複数の装置(≒異なるメーカのPLC)間でネットワークを組む場合にFL-netを採用するパターンが多いイメージです。

まとめ

ネットワークにはいくつかの種類がありますが、PLCのメーカによって採用するネットワークはほぼ固定化されます。

1つの装置や設備に使われるネットワークは2~3種類程度なので覚えるのもそう難しくは無いと思います。但し詳細まで(この記事では扱っていないサイクリック通信やトランジェント通信など)覚えるのはそこそこの労力を要します。

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