仕事上PLCのラダープログラムを作りますが、そのうえでは各社それぞれに違いがあります。良いところ悪いところの感じ方は各個人で異なると思いますが、個人的にソフト屋視点で感じたことをまとめてみたいと思います。
ちなみに私は三菱→OMRON→KEYENCEの順で慣れた(慣らされた?)クチです。
最初に扱うメーカーによってその後の比較基準が大きく変わるハズなので、その点はご注意ください。
三菱について
私がPLCの仕事にかかわった当初の開発環境はGX Devloperでしたが最近はGX Works2で、Works3は使ったことがないです。(今のところFX5とかiQ-Rを使う案件が無いので)
Works2に移行してから開発環境の動作自体が重くなったので当時はイライラきました。(ソフトエンジニアからすると環境が重いのは死活問題。)
特徴としては以下のとおりです。
※赤=他社と比較して不利、青=有利、黄=状況による
- ラダーの編集を始めたところから上下スクロールに制約がある(Works3は制約なくなった)
- 回路として正しくないと変換確定が出来ない
- 回路が横に長くなると折り返しが発生して見づらい
- 値比較(ワード比較)の回路が横長になる
- デバイスコメントや行コメント/ノートの文字数制限が厳しい
- パラメータを変更しなければプログラム単位でRUN中書き込み可能
- デバイスコメントは基本的にPLCに転送しない
- ラベルが使いにくい
- 開発環境以外の専用ツールが少なくて済む
今時の高性能・高機能化したPC/PLCにおいてもデバイスコメントが半角32文字までとか、、マジ止めて欲しい。回路編集に関しては他社に比べてやりにくい部分はありますが、他にコレといった不満や不都合を感じたことはありません。
デバイスコメントの転送についてはセキュリティや流出リスクの観点からすると転送しないほうが良いですし、複数担当者での管理やトラブル対応での利便性の観点からすると転送したほうが良いと言えます。三菱の場合はプログラムとデバイスコメントの転送領域(CPU内メモリ)が同じなので転送するとプログラム領域が不足する可能性が高いです。(他社は別領域を確保しています。)
三菱のラベルに関しては実際にはあまり使ったことがないのですが、、ラベルの追加・削除でコンパイルしなおすと割付デバイスが変わるのでRUN中書き込みすると思わぬ不具合が発生するとか。コレを聞いたときから”三菱のラベルは危険”というイメージが離れません。
OMRONについて
CS/CJシリーズなら開発環境はCX-Programmerで、NJ/NXシリーズならSysmac Studioです。
ちなみにSysmac Studioはほとんど使ったことが無いです。(可能なら使う仕事はしたくないです。。重いし分かりにくい。)
特徴としては以下のとおりです。
- ラダーの編集中に上下スクロールの制約は無し
- 接点やコイル、命令にデバイスが無くても入力は可能
- 回路が横に長くなっても折り返しが無い
- 値比較(ワード比較)の回路が縦長になる
- デバイスコメントや行/接点コメントの文字数制限が緩い
- タスク単位でのRUN中書き込み不可
- デバイスコメントは基本的にPLCに転送する
- 変数は(わりと)使いやすい
- 開発環境以外の専用ツールが多い
- ユーザ側には分かりにくい”ユニットVer.”が存在する
- 接点/コイル検索のスペース(検索)とB(戻る)が意外と便利
三菱と比べて回路編集はやりやすい感じがしますし、他社にはない接点コメント機能(CX-Programmer的には”注釈文”)は修正を入れる場合に重宝します。あまりに慣れすぎると三菱・KEYENCEを使った際に”なんでココにコメント入れられないんだ、ゴルァ!”と感じることもあります。
変数に関しては他社にはない”変数テーブル”が存在するため変数がどのデバイスに割り付けられるのかが分かりやすい反面、オンラインエディットで変数追加して変数テーブルを転送し忘れると後でラダーを読み出したときにコンパイルエラーが発生するので要注意です。
ただしOMRONの場合、、
CPUを止めずにタスク単位(三菱でいうプログラム単位)で書込が出来ないのが(かなりの)難点です。装置を都合の良いタイミングで停止できる状況は”かなり限られる場合が多い”ので。
またユニットVerというOMRON特有の仕様にも注意が必要です。設定のための専用ツールが別途必要になるのは仕方ないとしても、、ユニットVerが新しく専用ツールが古いと設定が出来ません。
実体験。装置立ち上げのため海外出張に行ったときのこと。
それまでに何度も使ったことのあるユニットなのになぜか設定できないトラブルに見舞われた。
原因はユニットVerと専用ツールの不一致。。。
○MRONマジで死ねばいいのに!と何度思ったことか。
KEYENCEについて
開発環境はKV STUDIOです。
ちなみに三菱・OMRONと比べると開発環境の動作はかなり重いです。
※どれくらい重いかの体感は、、Windows起動直後のPC全体がもっさりしている最中にGX Works2でプロジェクトを開くのに15秒程度かかる性能のPCを使っていたとき、同じ状況でKV STUDIOのプロジェクトを開くのに2分以上はかかりました。
特徴としては以下のとおりです。
- ラダーの編集中に上下スクロールの制約は無し
- 接点やコイル、命令にデバイスが無くても入力は可能
- 回路が横に長くなると折り返しが発生して見づらい
- 値比較(ワード比較)の回路が接点と同じサイズ(後者側のデバイスコメント非表示)
- デバイスコメントや行/接点コメントの文字数制限が緩い
- モジュール単位でのRUN中書き込み可能
- デバイスコメントは基本的にPLCに転送する
- グローバルラベルは使いにくい
- 開発環境以外の専用ツールが少なめ
- デバイス/ラベルの編集ダイアログ表示が重い
- 照合結果の詳細がとても見づらい(他社と比較したら使い物にならないレベル)
- ローカルラベルが実際に割り付けられるデバイスが転送しないと分からない
PLCに関しては後発メーカなのでどことなく三菱とOMRONの”良いとこどり”を狙っている感じはします。が、三菱→OMRON→KEYENCEと入ってきた私にとって回路編集が一番やりづらいのがKEYENCEです。まず重いし、、ショートカットが似ているようで違うし、、。
それと回路を作成していて一番イラッときたのは命令に良く出てくるLDA/STAです。昔アセンブラをかじったことがあるので実際のCPU内部では値をレジスタに格納→命令実行→結果をレジスタから取り出す、という動作が必要なことは理解できるものの、ラダーの命令記述で強制されることには納得がいかないですね。(おそらく似たようなクレーム紛いの要望があってADD/SUB/MUL/DIV命令をCAL+/CAL-/CAL*/CAL/(シンプル演算命令)に対応させたものと推測)
ラベルに関してはOMRONの変数並みに使えるのかと思ったのですが、グローバルラベルの場合は割付デバイスを決めないといけないのでラベルを使う効果が半減します。(KV8000シリーズから改善された?らしい)
ローカルラベルに関しては割付デバイスが分からないのは大半の人にとってはどうでも良いと思われますが、私の場合はよくデバッグ目的でPC上の別ツールから値を表示・操作するのですがラベルでは読み書き出来ないのでめちゃめちゃ不満です。
個人的にあまり良いイメージがないKEYENCEですが、、
スキャンタイムが短い(=処理速度が速い)
という部分は正直ビビリました。
三菱・OMRONを使った経験からすると桁が1つ違います。
まとめ(?)
良いも悪いもまとめも無い感じの内容ですが。。
プログラムを作りこむまでに便利なのはOMRON、実機立ち上げ以降に便利なのは三菱、高速性が要求される場合はKEYENCE、という感じです。
他にネットワークの違いもありますが、、気が向いたら記事にしたいと思います。
コメント
コメント一覧 (9件)
初めまして。
本当に納得ですね。
私も37年携わっていますが仲間でいつもどこのメーカーが使いやすいか
話題に上がります。
ちなみに私は三菱押しです。
タッチパネルについても記事にしてください。
次の記事も楽しみにしています。
はじめまして。
世の中に似たような環境(?)の方がいらっしゃるようで嬉しくなりました(笑)
三菱・OMRON・KEYENCEなら私も三菱オシです!
最初に慣れたのが大きいですが、、
実機を前にした「現場」で一番使い勝手が良い、と個人的に思ってます。
特に診断機能(PCとかCC-Linkとか)が結構優秀かと。
タッチパネルはあまり使う機会がなく、、
記事にできるほどの知識・ネタが不足してます。orz
しかも自分でゼロから作ったことが無いに等しい。。
でもいずれは記事にしてみたいですね。
初めて書き込み致します。
首記内容と異なり申し訳ないのですが、当方はソフトの使い勝手も然る事ながら、PLCの故障でKEYENCEはまだまだだと感じております。
小型のKV-Nなどのパッケージタイプのシリーズでは発生したこ事が無いのですが、KV-1000以降のビルディングブロック方式PLCはユニット照合エラーが発生し該当ユニット(時にはCPU)の交換を余儀なくされています。
特に最悪なのはKV-1000CPUでユニット照合エラーが発生するとCPUにはエアー表示がされますが、拡張ユニットの入出力がリフレッシュされず(入力は受け付けず、出力は保持)さらにCPUはフリーズしてしまいとても危険なです。
安全な対策で外部でCPUが正常にRUNしているか確認しハード回路が必要となりました。
KV-3000以降は異常で出力がOFFとなるのでまだ増しですが、KV-7000シリーズ以降では使用期間が短いので同様の現象今の所、確認していません。
皆様は同様のトラブルの見舞われた事はありませんか?
ただ、プログラミングソフトのライセンス、VerUP等のサービス面はKEYENCEが一番だと感じております。
はじめまして。
(ちょ~っと体調不良やらやる気の無さやら入院やらで更新止まってました。。)
KEYENCEの経験が浅く、まだ故障には見舞われていないので何とも言えないのですが、、
コメント頂いたKV-1000のヤツはかなりヤバいですね。。
こちらではKV-5500とか7500あたりから本格的に使い始めたので運が良かった(?)のかもしれません。
またKEYENCEだと立ち上げ初期にトラブルシューティングがやりにくい感じがしました。
三菱でいうところの”診断機能”相当のものが弱いな、、と。
その時はCC-Link通信のトラブルで子局が1~2台だったのでマシでしたが、
もし子局が10~20台あったら相当面倒だったと思います。
いつもオムロンばかりの使用なので、こういった比較はありがたいです。
SysmacStudio は重い時がありましたが、新しいスペック高めのPCに変えた後はサクサクになりました。ソフト自体が重いんので注意が必要ですが、やはり作りこむのはオムロンが一番やりやすいと同僚からは聞きます。SysmacStudioだとすべて1つのソフトでモーション、ロボットまでできるので重宝してます。
最近のPCはSSD搭載モデルも増えたので、そういったスペックのPCだとだいぶサクサク動くと思います。
多少古いPCでもHDD→SSDに換装すると体感速度が劇的に上がりますし。
(変更直後はマジで感動モノですね!すぐに慣れますけど。)
Sysmac Studio、、、CX-Programmerとあまりに違いすぎて個人的には好きなれないヤツですが、、
記事に書いたとおりSysmac Studioはあまり使ったことがないので何とも言えない部分が多いです。
ただCX-Programmerだと他社より作りこみしやすいのは確かなので、Sysmac Studioもそこは引き継いでいて欲しいところです。
はじめまして
三菱、OMRON、KEYENCE
KEYENCE押しです。
スクリプトで書けば通常のラダーより確実に早く書けます。
PID制御をする事が多いので三菱は遅くて使い物になりませんでした
はじめまして。
これまでPLCでスクリプトを書く機会がほとんどなかったのですが、、
最近少しずつ増えてきたような感じがします。
ラダー編集と比較してスクリプトやSTはテキスト編集なのでプログラム言語に慣れているかたであれば早く書けます。
特に計算メインの処理であればラダーよりもスクリプトやSTのほうが向いてますし。
そして複雑な計算が増えれば増えるほどスキャンタイムも伸びるので、時間的にシビアなものであれば三菱ではダメというのはあり得るかもしれませんね。
・KEYENCEのスクリプト→BASICライクな記述
・三菱のST→Pascalライクな記述
これだけで比較するならKEYENCEが便利ですね。
初めまして
日立 三菱 キーエンス オムロンの4社いじってます。
順を追って考えていくと
・日立は納期的な問題で厳しい事が多い。
自分は指定されることが多くよく使いますが、殆どの人は使わないんじゃないかな・・・
と言う所です。
ソフト的には20年ぐらい前には既にスクリプト的な書き方が出来ましたし何より慣れてます。
ただキーエンスVTと素直に繋がらず、MODBUSで繋ぐ事になったのはきつかったです。
(PLCは日立EHV,タッチパネルはキーエンスの指定が掛かっていたので)
・三菱は価格だと感じます。
私が新規に組む様な小型機ではFXの安さは魅力です。
ただSTは微妙に使いにくい、しょっちゅう「;」を忘れてイライラします。
PID命令は外乱入ったら一旦切って出力値決め打ちして、別の設定で動かす様な処理しないと使えない感じがします。
・キーエンスは個人的には一番使いやすいです。
スクリプトも日立に近く、慣れた感じで使えます。
PID命令も2自由度なので設定で往生しない感じがします。
ただ最安値帯の商品が高く導入しにくい事、加えてAC入力モジュールが無いのは大きな欠点です。
・オムロンは・・・あまり使わないしあまり好きでは無いのでヘタなこと言えないです。
未だにIO割付分からなくなることがあります。
CPUから数えるのか・・・左から数えるのか・・・